1 直近(当月~前月の抜粋)作品
自然の風景も人の営みも、晩秋から冬へと移っています。現在秋の俳句が多く届いています。ハガキを受け取ってから掲載までは早くても一ヶ月以上の日数がかかります。もうすぐ12月、投句作品はぼつぼつ冬・新年の句になりますね。今年もあとわずかとなりました。皆さまの作品を楽しみにお待ちしております。 令和7年11月15日 白帆
2 最近~2017年 紙上掲載作品
*目下書き足し中。
1 直近の第一席
●父からの便りのやうな朴落葉 (美 作) 駿河 亜希 令7・12・21 掲載 落ちてきた朴の葉からいきなり父を連想。枯れ色になった大きな葉っぱ。筆者は母から何通も封書をもらった。父からは日焼けしたはがき一枚のみだった。
●水鳥や山さび色に鎮もれり (美 咲) 川上 京子 令7・12・14掲載 水鳥は鴨・雁など水に浮く冬鳥の総称。その鳥が冬枯れの景に生命を吹き込んだ。またかな書きのさび(寂び)から色彩的な余情が感じられる。
●銀杏散る耳はラジオの英会話 (和 気) 今田 結月 令7・12・7掲載 英会話を聴いているときは全神経を耳に集中と思いきや、視線はきっちり銀杏を追っている。受験生ではなく、文化的な暮らしのひとこまというところ。
●塗りたての屋根の上行く秋の雲 (岡 山) 大智 靖子 令7・11・30掲載 澄み切った青空に刷毛で描いたような白い雲。塗りたての屋根との対比が鮮やか。ちょっと危うい二者の取り合わせに、作者の茶目っ気な視線が感じられる。
●選択の結果今ありとろろ汁 (倉 敷) 岡本 保良 令7・11・23掲載 誰にも節目や岐路があり、その都度決断・選択をしてきた。今とろろ汁を味わっているのがその結果。確かに人生はこのような断片の積み重ねであろう。
●干し柿や朝な夕なの陽の恵み (里 庄) 重森 順恭 令 7・11・16掲載 朝な夕なとは終日のことだが、朝も夕もと区切ったところに朝は朝なり夕は夕なりの、適度な日差しという意味合いがこめられている。干し柿の熟成はそれらの日の恵みによるのである。
●空港の展望デッキ螇蚸(ばった)飛ぶ (倉 敷) 守谷 妙子 令7・11・9掲載 飛行機を見る展望デッキ。そこで同じ飛ぶものでも螇蚸を登場させたのが異色。螇蚸によって空港の風景やローカル性などがほのぼのと浮かび上がってくる。
●独り居につくつくぼうしせまりくる (瀬戸内) 山﨑 典子 令7・11・2掲載 「独り居」には女の心細い暮らしぶりという含みがある。つくつくぼうしは秋の訪れを告げる親しい虫だが、独特の連続音に迫り来ると感じた作者。鳴き声があわれなどと言っている場合ではなくなった。
●壜(びん)の口吹けば鳴るなり秋山河 (岡 山) ひらの ゆう 令7・10・26掲載 子供の頃は棚板から壜まで楽器代わり。戯れに吹いてみれば懐かしい故郷の山河がよみがえったのだ。小皿叩いてチャンチキおけさの世代は壜の口も吹いた。
●菰巻いて人間くさき松の群 (岡 山) 石破ますみ 令7・10・19掲 岡山後楽園の松の菰巻(こもまき)は秋の風物詩。園路近く並んで巻かれた姿に、人間臭ささを感じるとはと思ったが、だんだんそんなふうに見えてきた。
●終戦日バッグの中で着信音 (倉 敷) 渡邊 香 令7・10・12掲載 季語とあとの内容が離れ過ぎでよく分からないという向きも。だがこのくらい離してもよいのである。この離し具合から、昔日の感が引き出されるのである。
●熱つあつのソース吸ひこむ鰺フライ (岡 山) 柴田 征子 令7・10・5掲載 揚げたての鰺フライ。熱々の衣(ころも)はもちろんパリパリの黄金色。近頃ハイカラなソースが幅を利かせているようだが、やっぱりあの濃い口ソースですよ。
●
連翹(れんぎょう)の道


