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*俳句は季節感を大事にします。 季節がずれた場合、その他の事情などで掲載時期が遅れることがあります。 ご諒承ください。
2 最新 ~ 2017年
紙上掲載作品
*目下書き足し中。
1 直近の第一席
●雨の日や筍(たけのこ)蕨(わらび)煮て暮れる (倉 敷) 森永 絢子 令8・5・11・掲載 春は意外に雨が多く、雨と陽が山野の恵みを育むのである。晴れの日には採り、雨の日はゆっくり煮る。雨の日も天の恵みであり、日々好日とはこれ。
●潮招き此岸(しがん)まだまだ面白い (勝 央) 竹内 亨佑 令8・5・4掲載 潮招きとはカニの一種で、大きな爪を振って潮を招いていると見た呼び名。これが彼岸(ひがん)から自分を呼んでいるが、まだまだ此岸(この世)に未練がある。
●春の川のぞく自転車かたむけて (鏡 野) 西村なほみ 令8・4・27掲載 早くも水草や小魚などの生命の営みが始まっている。それらを覗き込む様子を「自転車かたむけて」と。この単純な所作、その描写が秀句をもたらした。
●補強するカラスネットや花の昼 (岡 山) 佐田 京子 令8・4・20・掲載 生ゴミを狙ってくるカラス対策。町内会役員は明日またやって来るカラスのため、防御ネットを繕っているのである。世間は花見に浮かれているお昼時。
●ビバルディの「春」の流るる開所式 (岡 山) 石破ますみ 令8・4・13・掲載 明るく希望に満ちたビバルディの「春」。 もし所長や来賓挨拶が続くだけの場合を考えれば、どれだけの効果か。 ビバルディの一曲で優雅な式典になった。
●貴賓席めくや紫クロッカス (赤 磐) 桝田つやこ 令8・4・5・掲載 クロッカスやムスカリは垂直方向に咲き上がり、紫色は高貴でエレガント。 ひとかたまりになった様子は、たしかに貴賓席のイメージである。
●逃げ出した鬼も出て来て豆をまく (岡 山) 柴田 征子 令8・3・29・掲載 子供達にとって鬼は相当怖い存在。 それをやっつけて喜んだあと、今度はその鬼が豆を撒いてくれてまた大喜び。 楽しくて嬉しい豆撒き会場。
●冬あかね伊賀上野城つつみこむ (倉 敷) 守谷 妙子 令8・3・22・掲載 忍者の里と言われる伊賀は山深い盆地である。 低地へ突き出た台地の先端に城が立っているので、城郭が夕日を一身に浴びてたたずむ景となる。
●厳寒の底より立ちし槍ヶ岳 (玉 野) 三好一彦 令8・3・15・掲載 槍ヶ岳は三千㍍を越える高山で、頂は鋭く尖っている。 厳寒の底よりという表現は、風景描写というより、大自然の根源的エネルギーの表白というべきか。
●冬日差旧梶村家躙り口 (鏡 野) 藤田 明子 令8・3・1・掲載 茶室の躙り口は縦横70㎝足らずの開口で、客人はくぐって入る。 日常を離れた異空間へ射し込む冬日差し。 わずかな入口だけの明暗がひときわ厳しい。
●柊の花吹き零(こぼ)す丘の風 (倉 敷) 渡邊 香 令8・2・22・掲載 柊の白い小花。散っていて気づくことがあるが、気高い香りで気づくこともある。その小花が風に乗って丘一面を覆う。清々しい景観の中に佇む作者。
●ひれ酒の酔ひとろとろと伊賀上野 (倉 敷) 岡本 保良 令8・2・15・掲載 ここが三重県?という山々に囲まれた盆地で、芭蕉の古里でもある。ご当地へ来て固有名詞を拝借し、一杯やりながら作ればいい句も出来るというもの。
連翹(れんぎょう)の道
●ピザを待つ親子に丸い冬の月 (岡 山) 三好ゆみこ 令8・2・8・掲載 ピザを待つ親子を照らしている月。 まるでアニメの一場面のような鮮やかな景。 寒い夜なのに、こんなにあたたかいお月様は、これまで見たことがない。
●陽の力じつくりためる冬田かな (鏡 野) 原 洋一 令8・2・1・掲載 凍てつく冬の田。 春の訪れを待つだけかと思っていたら、寒中の陽光をじっくり溜め込んでいるというのである。 大自然の力を感じさせる句である。
●寒菖蒲(かんあやめ)心の向きを問い直す (津 山) 坂手 具世 令8・1・25 掲載 自分は何を目指しているのか。 本当にこれでよかったのだろうかと、自らに問うている作者。 寒菖蒲のイメージから清楚な心うちが伝わってくる。
●ながながと夫宣(のたも)うてくさめかな (岡 山) 竹林 貞子 令8・1・18・掲載 無関心な妻を相手に、得意げに持論を展開している内に寒気を催した。 宣うての一語で家庭の状況がユーモラスに浮かび上がる。 くさめはクシャミの事。
●初電車もうすぐ海の見えてくる (岡 山) 石破ますみ 令8・1・11 掲載 新年の期待と希望を乗せて、電車は海へとまっしぐら。 旧年のしがらみから、日常の喧噪からどんどん私を引き離してゆく。 そしてもうすぐ海が見えてくる。
●畳間のパントマイムの冬木影 (岡 山) ひらの ゆう 令7・12・28 掲載 裸木となって寒風に弄(もてあそ)ばれている冬の木立。 その影が日差しを浴びた畳の上でパントマイムを始めている。 風が強ければ強いほどリズミカルに。
●父からの便りのやうな朴落葉 (美 作) 駿河 亜希 令7・12・21 掲載 落ちてきた朴の葉からいきなり父を連想。 枯れ色になった大きな葉っぱ。 筆者は母から何通も封書をもらった。 父からは日焼けしたはがき一枚のみだった。
●水鳥や山さび色に鎮もれり (美 咲) 川上 京子 令7・12・14掲載 水鳥は鴨・雁など水に浮く冬鳥の総称。 その鳥が冬枯れの景に生命を吹き込んだ。 またかな書きのさび(寂び)から色彩的な余情が感じられる。
●銀杏散る耳はラジオの英会話 (和 気) 今田 結月 令7・12・7掲載 英会話を聴いているときは全神経を耳に集中と思いきや、視線はきっちり銀杏を追っている。 受験生ではなく、文化的な暮らしのひとこまというところ。
●塗りたての屋根の上行く秋の雲 (岡 山) 大智 靖子 令7・11・30掲載 澄み切った青空に刷毛で描いたような白い雲。 塗りたての屋根との対比が鮮やか。 ちょっと危うい二者の取り合わせに、作者の茶目っ気な視線が感じられる。
●選択の結果今ありとろろ汁 (倉 敷) 岡本 保良 令7・11・23掲載 誰にも節目や岐路があり、その都度決断・選択をしてきた。 今とろろ汁を味わっているのがその結果。 確かに人生はこのような断片の積み重ねであろう。
●干し柿や朝な夕なの陽の恵み (里 庄) 重森 順恭 令 7・11・16掲載 朝な夕なとは終日のことだが、朝も夕もと区切ったところに朝は朝なり夕は夕なりの、適度な日差しという意味合いがこめられている。 干し柿の熟成はそれらの日の恵みによるのである。
●空港の展望デッキ螇蚸(ばった)飛ぶ (倉 敷) 守谷 妙子 令7・11・9掲載 飛行機を見る展望デッキ。そこで同じ飛ぶものでも螇蚸を登場させたのが異色。螇蚸によって空港の風景やローカル性などがほのぼのと浮かび上がってくる。
●独り居につくつくぼうしせまりくる (瀬戸内) 山﨑 典子 令7・11・2掲載 「独り居」には女の心細い暮らしぶりという含みがある。つくつくぼうしは秋の訪れを告げる親しい虫だが、独特の連続音に迫り来ると感じた作者。鳴き声があわれなどと言っている場合ではなくなった。
●壜(びん)の口吹けば鳴るなり秋山河 (岡 山) ひらの ゆう 令7・10・26掲載 子供の頃は棚板から壜まで楽器代わり。戯れに吹いてみれば懐かしい故郷の山河がよみがえったのだ。小皿叩いてチャンチキおけさの世代は壜の口も吹いた。
●菰巻いて人間くさき松の群 (岡 山) 石破ますみ 令7・10・19掲 岡山後楽園の松の菰巻(こもまき)は秋の風物詩。園路近く並んで巻かれた姿に、人間臭ささを感じるとはと思ったが、だんだんそんなふうに見えてきた。
●終戦日バッグの中で着信音 (倉 敷) 渡邊 香 令7・10・12掲載 季語とあとの内容が離れ過ぎでよく分からないという向きも。だがこのくらい離してもよいのである。この離し具合から、昔日の感が引き出されるのである。
●熱つあつのソース吸ひこむ鰺フライ (岡 山) 柴田 征子 令7・10・5掲載 揚げたての鰺フライ。熱々の衣(ころも)はもちろんパリパリの黄金色。近頃ハイカラなソースが幅を利かせているようだが、やっぱりあの濃い口ソースですよ。


