芭蕉の「俳席心得・三ヶ条」
芭蕉の「俳席心得・三ヶ条」
芭蕉直筆の「会式掟」…俳席之掟・会式心得・会式三ヶ条等とも呼ばれている。
厳めしく物々しいタイトルと中身(本文)の連衆への心配り、そしてユーモラスな但し書。蕉風俳諧の現場の息遣い・実態が「会式掟」から浮かび上がってくる。
左の軸(會式)は下欄の現存する芭蕉直筆と伝わる二本の軸(会式心得)の特徴を選択して、岡山県連句協会俳席備品として作成。
文案作成:大倉漣魚
書写:今村菁華(華紅)
制作総括:米林 真
作成日:2014年5月
*文字の筆跡は芭蕉風を心掛けた
會 式 かいしき(くわいしき)
一 諸禮停止 一 しょれいちょうじ
一 出合遠近 一 であいえんきん
但聲先 ただしこわさき
一 一句一直 一 いっくいっちょく
月華一句 つきはないっく
又 曰 またいふ
麁食麁茶 そしょくそちゃ
あるにま可せよ あるにまかせよ
酒乱耳及 しゅらんにおよぶ
事な可礼 ことなかれ
芭蕉庵桃青書 印 ばしょうあんとうせい かく 印
補注
會式(会式)
諸禮停止(諸礼停止) ………一般的な礼儀作法は差し止め。
出合遠近 ………付句が出来た時、挙手なら遠い座の人が優先される。
但聲先(但声先) ………ただし声が早かった場合、その人の句を優先する。
一句一直 ………差障りがあれば、一句につき一度だけ直す。
月華一句 ………月、花などの句は一人一句に。(一巻の主要な句は譲り合うことの意。)
又 曰
麁食麁茶あるにま可せよ ………粗末な食べ物やお茶であっても、出されたもので辛抱しなさい
酒乱耳及事な可礼 ………酒を呑んで乱れぬこと。(つまり呑みながらやっていたという事)
芭蕉庵桃青 書 ………庵号:芭蕉庵(ばしょうあん)。 俳号:桃青(とうせい)。
但し書き「又曰」があるのが特徴
出されている食べ物に文句を言うな。酒はのんでもいいが騒ぐなよ――という感じが読み取れる。座の文芸と言われる俳諧連歌(現代の連句)は楽しい座であったのだろう。但し真剣な場であったことは「会式」という題から読み取れる。
右の写真 正式(しょうしき)俳諧興行の様子
第22回青時雨忌 追善俳諧興行2010/06/21 浅草寺伝法院 ・大書院にて
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