『奥の細道』全発句(63句)

 ■ 奥の細道



草の戸も住替る代ぞひなの家  (深川)

  草庵を人に譲っての旅立ち。次は雛飾りのある華やいだ家になるだろうよ(出立の感慨と草庵への挨拶句)


行春や鳥啼魚の目は泪     (千住)     

  行く春を惜しんで鳥や魚まで悲しむ。別れの心情


あらたうと青葉若葉の日の光

  ああ尊いなあ、ここ日光では青葉若葉が日の光に輝いている。日光山東照宮への挨拶句


剃捨て黒髪山に衣更  (曾良)

  黒髪山は歌枕。日光連山の主峰男体山(なんたいさん)の別称


暫時は瀧に籠るや夏の初

  裏見(うらみ)の滝(歌枕)拝観。しばらく、夏(げ)の荒行に挑む修行僧の気分に


かさねとは八重撫子の名成べし (曾良)

  かさねという優雅な名の子登場。物語に色を添えたか


夏山に足駄を拝む首途哉

  役行者(えんのぎょうじや)の足駄を拝し、出立の思いを新たにした


木啄も庵はやぶらず夏木立

 芭蕉参禅の師仏頂(ぶっちょう)和尚が修行した草庵を、雲巌寺(うんがんじ)の山中に捜し、見つけた。啄木が突けば崩れそうな草庵が現存していた。


野を横に馬牽むけよ郭公

  郭公(ほととぎす)が野を横切ったぞ、馬をそっちに向けてくれ――。当時(江戸時代)はほととぎすを郭公と表記していた。


田一枚植て立去ル柳かな

   道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ち止まりつれ    西行

  西行は柳の陰(かげ)に立ち止まった。対して芭蕉は立ち去る柳と詠み、西行上人と呼応し偲んだのではないか。


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