『奥の細道』全発句(63句)
■ 奥の細道 元禄二年弥生廿七日、 草の戸も住替る代ぞひなの家 (深川) 草庵を人に譲っての旅立ち。次は雛飾りのある華やいだ家になるだろうよ(出立の感慨と草庵への挨拶句) 行春や鳥啼魚の目は泪 (千住) 行く春を惜しんで鳥や魚まで悲しむ。別れの心情 あらたうと青葉若葉の日の光 ああ尊いなあ、ここ日光では青葉若葉が日の光に輝いている。日光山東照宮への挨拶句 剃捨て黒髪山に衣更 (曾良) 黒髪山は歌枕。日光連山の主峰男体山(なんたいさん)の別称 暫時は瀧に籠るや夏の初 裏見(うらみ)の滝(歌枕)拝観。しばらく、夏(げ)の荒行に挑む修行僧の感慨にふける かさねとは八重撫子の名成べし (曾良) かさねという優雅な名の子登場。物語に色を添(曽良の日記に記載なし) 夏山に足駄を拝む首途哉 役行者(えんのぎょうじや)の足駄を拝し、出立の思いを新たにした 木啄も庵はやぶらず夏木立 芭蕉参禅の師仏頂(ぶっちょう)和尚が修行した草庵を、雲巌寺(うんがんじ)の山中に捜し、見つけた。啄木(きつつき)が突つけば崩れそうな草庵が現存していた。 野を横に馬牽むけよ郭公 しばし野中の 郭公 (ほととぎす)に聞き入っていたが、馬方よ先(黒羽)へ進めてくれ――。当時(江戸時代)はほととぎすを郭公と表記していた。 田一枚植て立去ル柳かな 道の辺に清水流るる柳陰しばしとてこそ立ち止まりつれ 西行 西行は柳の陰(かげ)に立ち止まった。対して芭蕉は立ち去る柳と詠み、西行上人と呼応し、偲んだのであろう。 以下、全63句一覧(解説付き)2024年12月『会報 俳句クラシック-冬号』にて配布します。